28.向こうから見たこっち
お前はいつでも私が様々なことを判っていて、お前のことも周囲のこともよくよく判っていて、それでモノを言ったり振る舞ったりしているように思っている節があるが、私が判っていることなどたかが知れているのだと、お前は想像したこともないのではないか。
だから私は、お前のことを馬鹿だと言う。
けれど私はある面において、お前より余程馬鹿なのだ。
お前はお前自身を知っていてお前のやるべきことを知っているが、私は私自身を本当に知っているのかと疑っている。
私を取り巻く状況は時に明るく時に暗く、殊更不明確にあるのは何をおいても私自身の心と躰。
心など、所詮脳内の電気信号の連なり、躰は有機物で構成された単なる物体に過ぎぬ。
しかしそれらは、私の意思や希望を無視し続ける。
胸の痛み、カラの空間ばかりを抱く腕の虚しさ。
燻る温度。肌の感触、声と吐息。言葉。
発せられず消えもせず痼りとなっていく感情。要求できぬ欲求。
それら全て、私が私の身の内だけで綺麗に整理整頓し、跡形もなく捨て去ることに長けていると、お前はまるでそう思っているかのようだ。だが、お前が本当にそう思っているのかそれすら私には判らない。
お前の望むモノはあれかこれかと逡巡し、半信半疑で差し出した結果お前の明るい顔が見られればそれは成功したのだろうと私が密かに安堵するように、お前は私の望むモノについて考えることなどがあるのか。お前は馬鹿だから、多分そんな事は考えまい。
であればこれは私の強欲というものだと私は何度も思い直す。
欲望も祈りも願いも、全てはお前から。幸せも孤独も嫉妬も矛盾も、全てはお前の傲慢な気儘さが私の中から掘り起こしたというのに。
傲慢が故にお前は私の脆弱を顧みない。
そして私は結局の処、お前が傲慢だということに甘えているのだ。・・・それは私のせいなのか?
私は私の力の及ぶ限り、決してお前に私の持て余した我欲を悟られまい。
必ず上手に繕って見せよう。電気信号も有機物も関係ない顔で、お前の傲慢をあしらってお前に手を差し伸べて。
それは私のお前へのせめてもの意趣返しなのだから。
−−−お前は私がこんなにも愚かだと、ほんの少しでも知っているのか?
・・・コメントのしようも無いが、何か言わずにはおれんモノを・・・;
・・・なんとなく情けないカンジで理屈っぽく片恋っぽく、を目標(藁)。
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